【Perú日誌】①日本鍼灸知ってますか?〈神内先駆者センター篇〉

皆さんこんにちは。

今回は「Perúの人に日本鍼灸を知ってもらう」をテーマにしてVidaSanaがやってきたことをご紹介します。

 私たちのPerú滞在中の活動としてできること、それはなんといっても日本で何度も行った鍼灸体験会。

 最初から「さあ、鍼灸治療しますよ!」と呼びかけても「え?いきなりそういわれても…なんだか怖いし不安」という反応になるのは、日本においても南米においても同じです。

 そこで、今回も日本で行ったのと同じように1回15分の鍼灸体験会を2日に渡って開催しました。

 体験会開催をしたのは、リマにある日秘文化会館(Centro Cultural Peruano-Japonés)に併設されている神内先駆者センターです。神内先駆者センターとは、ペルー日系人協会(APJ)が運営している高齢者向けデイサービスセンター。

 プロミス株式会社の創業者である神内良一氏が南米諸国で高齢となった日本人移民者を支援するべく建てた医療福祉施設の一部です。玄関には神内氏の業績を称え、銅像とプレートが飾られてました。

  サービスを受けているのは日系ペルー人の高齢者で、現在では日系2世の方が中心となっています。

 今回鍼灸を体験していただいたのも、そのデイケアサービスご利用者様。

 次週に忘年会があるとのことで、そのとき披露する歌を皆さんで練習してらっしゃいました。「二人でお酒を」を合唱していて、これがなんとも不思議な気持ちになりました。他にも懐かしい昭和の歌謡曲をカラオケで楽しんでいらっしゃる中での施術になりましたので、思わず歌ってしまいました(笑)。

 実はこちらでは4年前の私がまだ鍼灸学生のときに、指圧の練習をさせていただいたことがあります。そのときは10人行う予定だったのですが、待機列ができてしまい、10人どころでは済まなくなり……大変でした。

 神内センターが併設されている日秘文化会館の隣には、日系病院(Policlínico Peruano-Japonés)があります。

 今回の滞在目的としては、ペルーの鍼灸実態調査が含まれていました。ペルーにおいて鍼灸はどういう扱いなのか、法律的にはどうなのか、伝統医療はどう扱われているのか、日本の鍼灸師は病院で働くことができるのか、そもそも私たちがペルーで鍼を打ってもいいのか、もぐさは使えるのか、等々。詳しいことが一切わかりませんでした。Google先生もお手上げです。

 日系病院では、鍼灸師が一人働いているということがわかったのですが、それ以外の公式な場所での具体的な活動が見えてきませんでした。それらの調査も含め、日系病院の局長さんやペルー日系人協会役員の方、実際日系病院で働いている鍼灸師の先生にお話を伺うことができました。

 そうしてお話を伺ううちに見えてきた事実があります。

・日系病院内で鍼灸師として働く場合、ペルーの医師国家資格が必要である。

・ペルーにおいて鍼灸の国家資格にあてはまるものは存在しない。

・ただし、鍼灸を規制する法律も存在しないため、病院外であれば活動・治療は可能。

・現地にも鍼灸学校は存在するが、民間資格扱い。

 日系病院で働く鍼灸師、アジト先生は実にユニークな先生でした。日本語であえて敬意を込めて表現すると彼は「伝統医療オタク」。東洋医学のみならず多様な伝統医学を学び、日本の鍼灸の特徴である「てい鍼」や金・銀の使い分けについても理解がありました。アジト先生はペルーの鍼灸学校を卒業したあとに、医学部で学び医師免許を取得し、医師として病院に勤務する形で鍼灸を行っています。

日系病院の医師リスト:アジト先生

 というわけで、日本の鍼灸師がペルーの病院内で鍼灸を行うのは難しいが、どうやら私たちが鍼灸施術をすること自体に問題はなさそうということがわかり、今回の鍼灸体験会を開催するに至りました。

神内センターの様子
施術を受けてくれたおばあちゃんとのショット

当日の流れは、以下のとおり。

  1. 鍼灸の説明(刺さない鍼を使うこと)
  2. 希望者の皆様に、てい鍼を当てるだけの体験
  3. さらに時間をかけた施術希望の方を対象に15分の鍼灸体験

 この説明の際に、鍼灸を受けたことがある人がどれくらいいるのか尋ねてみたのですが、意外にも鍼灸を受けたことがある方が全体の5分の1くらいいらっしゃいました。(1、2名くらいを想定してカンペを作っていたので慌てました!(笑))

 日本に住んでいようとペルーで暮らしていようと、身体が痛むときは痛みます。薬と手術で治らなければ、頼るところは伝統医療。その流れは変わらないようです。

 

 さて、この鍼灸体験会は月曜日と火曜日に行ったのですが、実はこの神内センターに来られる方は曜日によって変わり、月と火でメンバーがすべて変わります。

 行うレクリエーションも曜日によってことなるため、なかなか面白いことが起こりました。

 月曜日の刺さない鍼の体験希望者は、挙手多数の満員御礼。くじ引きで希望者を厳選することになりました。

 ところが、火曜は挙手がまばらで結局満員にはなりませんでした。

 実は月曜日はレクリエーションの一部に指圧が含まれており、それを楽しみにしている方が少なくないとのこと。

 そして、火曜日は歌をメインにしているために、施術を受ける方が少なかったのです。

 ラテンの国だから人々は何に対しても積極的というわけではなく、古今東西自分が慣れているものに対しての抵抗は少なく、未知の領域に対してはハードルが高いのでしょう。刺さない鍼に対しても抵抗が強いのですから、刺す鍼を警戒する人が多いのは仕方ないところがあります。

 それでも今回の体験を受けていただいた方からは、怖くないし気持ちいいという言葉を頂きました。

 刺さない鍼は鍼へのハードルを下げる。これは間違いないと思っています。やってみれば、鍼が怖くないとわかる。

 体験会中、何度も聞かれたことがあります。

「ペルーのどこに行けば先生たちの施術が受けられるの?」

 これは、わたしたちVida Sanaが必要とされているという嬉しいお言葉。

 しかし、それ以上に日本鍼灸がペルーで必要とされているという証拠だと感じました。皆さん日本鍼灸施術を受けたいと思っていらっしゃる。でも、受ける場所が見当たらない、どこに行けばいいかわからない。

 鍼灸の需要は大いにある。ペルーで鍼灸が広まる可能性は大いにある。そう感じられた素晴らしい体験会でした。

 

 神内センターの皆様、ならびに今回の機会を作っていただいたすべての方にこの場をお借りして、御礼を申し上げます。ありがとうございました!

おばあちゃんのお饅頭

 そして、施術のお礼に!ということで注文に応じて今でも和菓子を作っている80代のおばあちゃんから、これまでの人生で一番美味しいおまんじゅうを頂きました。

 いや、この餡が絶品だったんです。お豆がもつ生命力にあやかりたいものです。

神内センター利用者の皆様と一緒に昼食をいただきましたが、80代の皆様の食欲旺盛な姿に感動を覚えました。

お昼の写真:沖縄料理の豆腐チャンプルーとペルー料理のカウサの組み合わせが日系的!

 美味しい食べ物から元気をいただいて、健やかな毎日を!次回は、ペルーの食べ物について紹介しますね。

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