【Perú日誌】⑤日本鍼灸にできること@チャチャポーヤス

 今回はチャチャポーヤス施術行脚編です。

VidaSanaは、通常の日本での施術では一日にお相手をする人数をかなり絞っていますが、今回のチャチャポーヤス滞在では、1日で6名を施術する記録を打ち立てました(笑)。

ここで問題です。
南米人は直接皮膚上で燃やす透熱灸を熱がるでしょうか?

……正解は、

全く熱がらないんですね。

これは全てのタイプの人にあてはまるわけではないと思いますが、やはり紫外線が強い環境で浅黒くなった皮膚は、熱さに対して抵抗を持っているようです。お灸をしても日本人のように悲鳴をあげるほど熱いと感じる人はいなかったのです。そういうわけで、南米人とお灸の相性は、もしかすると皮膚の薄いアジア人よりも良いかもしれないと思わされた次第です。

これはイギリスのチャリティ団体モクサアフリカの透熱灸セルフケア・キャンペーンがアフリカの地で受け入れられたこととも関係するかもしれません。日本の鍼灸師の間では、著名なモクサアフリカですが、ご存じない方のために概略だけ紹介します。世界各地では、いまだに結核で亡くなる方が後を絶ちません。実は、日本の戦前期も結核での死亡率はかなり高いものでした。栄養が十分に足りない生活で、免疫力が落ちていると結核に罹患しやすくなります。そんな中、免疫力を高めるのに透熱灸がとても有効であるということで、世界にお灸を広めようとしているのがモクサアフリカなのです。興味を持たれた方はぜひHPをチェックしてみてください。 

モグサアフリカ

さて、それではVidaSanaがチャチャポーヤスで何故現地人に施術を行うことになったかを説明しましょう。

それは、既にご紹介した現地コーディネーターのAyakoさんの要望によるものでした。Ayakoさんの友人に現地で鍼灸を学んだ経験のある方がいらっしゃいます。元々その方が鍼灸を学んだのは約20年前。前職でのお忙しさやコロナ禍もあって、今は臨床から離れて長いとのこと。しかし、東洋医学の素晴らしさを実感していて、今後は施術をして苦しんでいる人たちの役に立ちたいし、自らの臨床力を上げたいとのこと。それで、VidaSanaの滞在中に日本鍼灸のやり方を学びたい!というラブコールになったのです。それでは、VidaSanaも一肌脱ぎましょう!ということになり、継続的に鍼灸を受ける可能性のある患者さんのお宅を一緒に回って、実地でVidaSanaの施術の仕方を学習していただくことになりました。南米出張施術です。

基本的には、地方で農作業や肉体労働を生業としている方、または過去にやっていた方を診ているので、普段Vida Sanaが日本で施術させてもらっているオフィスワーカーの身体とは一味違いました。

具体的には、以下のような違いを感じました。
一つは、身体の反応の良さです。
例えば、母親のおなかから出てくる際に斜頸になった経験のある40代女性。
とても仕事熱心で、平日は本業のオフィスワーク+車での移動も多い生活なのに、さらに休日も副業で宿泊業を営むパワフルな方。
斜頸からくるものなのか、首の調子が悪いことに端を発しているものと思われる頭痛に悩まされているとのこと。うつ伏せになってもらうと素人目に見ても分かるほど首が曲がってしまっている状態。長年にわたる症状だというので、そんなに簡単には治らないと思ったのですが、少し首に鍼を刺しただけで、首が真っ直ぐになりました。そして、1週間後の2度目の施術の際には、頭痛の方もかなり軽減しているとの報告を受けました。なんと素晴らしいお身体の反応でしょう。普段オフィスワークだけやっている方だと、こうはいきません。

もう一つは、身体の頑丈さです。
実は、身体の反応の良さは、身体の頑丈さを基盤にしています。鍼を打ったその直後からバリバリ動き始めて、働けてしまう方たちはこのタイプ。
ペルーの方たちの身体の強靭さは日本のオフィスワーカーとは違うなと感じました。もちろん、日本の患者さんで強靭な身体の方もいらっしゃいますよ。ただ、その割合が違う感じがしたのです。

それは、ひとえに、農作業や身体を動かす働き方も関係しますが、食生活も大きく関係していると思われます。
現地の典型的な食生活は、ジャガイモ+豆+トウモロコシ+スープです。ちょっと贅沢をする時には、肉ガラや鶏ガラでだしをとってスープに落とし卵を入れることもあります。


植物性(+動物)タンパク質が含まれながら、基本的に天然の食材をそのままいただく!という食事であることが分かります。調味料もシンプルに天然塩や唐辛子で充分にリッチな食事になります。

実は、ここで大事なのは、ジャガイモやトウモロコシの栽培方法というか、品種の多様性の確保。私たちが訪問した伝統的農業を実践している家庭では、ジャガイモを植えるのに必ず4~5種類の品種を同じ畑に植えるのです。その方が、病気にかかりにくくなりますし、全滅してしまうリスクを回避できます。逆に、一品種だけを植えることは、農薬などを使う必要が出てくることを意味します。大地に負担をかけない持続可能な栽培方法が、伝統的に選択されてきたのです。そうすると、総収量としては減少するものの、栄養素の確保という意味では効率的なのだそうです。

病気対策として複数種類の野菜を植える

国際薬膳師資格をもつVidaSanaとしては、健康的な身体をつくる食べ物の追求は、鍼灸の腕を磨いていくのと同じ位重要なミッションと考えております。そういう意味で、今回のチャチャポーヤス滞在は、真に豊かな食生活とは何かを考えさせられる貴重な機会となりました。

以上で解説してきた今回の患者さんたちのお身体について、ここまで言及してきた環境要因とは別に、共通する個人的要因がありました。
なんだと思います?それは、皆さん、本当に真面目で仕事熱心であるということです。

ラテン系というと、軽いノリで仕事より自分の楽しみが優先なテキトー人だらけ!というイメージが一般的かと思います。(いいすぎ?)
しかし、今回お会いした患者さんにはそのような方は一人もいませんでした。仕事中毒の真面目人間で、まるで往年の日本人を見ているようでした(笑)。それも、今回のコーディネーターAyakoさんがそのように真面目で仕事熱心な方だからこそ。Ayakoさんの周りに集まってくる人間は、同じ系統の人間なんだなぁ!と感じました。いわゆる、「類は友を呼ぶ」ですね。

日本でも、ペルーでも、世界のどこにいっても、自分の特性に合った人間が自分の周りに集まるんだなぁとつくづく思いました。

ラテンにも真面目な人はいます、仕事に一途な人間はいます。
今回一緒に施術を見ていただいた方も、きっと患者さんに真摯に向き合っていくだろうなと思っています。

ペルーのチャチャポーヤスから日本鍼灸の和が広がっていくことを心から祈っています。

今回で、ペルー編はおしまい。
次回は最終回、メキシコで感じた日本の立ち位置の変化についてです。

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