今回のブログはスペイン滞在のメイン目的であるKINSEIKYU®についてお伝えします。
VidaSanaのスペイン滞在後半はフェリップ先生の治療院があるタラゴナ。
タラゴナは、バルセロナから電車で一時間半ほど海岸線沿いを南下した街で、観光客が夏のバカンスに地中海を求めて訪れる地域のひとつです。フランスと電車一本でつながっており、フランス語で話す人もチラホラおみかけしました。


タラゴナはローマ時代の遺跡が有名。古くからの歴史が積み重なった土地で、ローマ支配、イスラム支配、キリスト支配と異なる支配体制の痕跡を目にできます。なんとローマ時代以前のイベリア人の痕跡まで見られます。


この教会はタラゴナの守護聖人が祀られているのですが、この写真を見てください。


ちょっとアジア系の仏様っぽくないですか?
さらに、この天井を見てください。教会の奥にいった小部屋にあったんですが、漆塗のようなアジア的雰囲気。
比較してもらうために、教会の中をみてもらうと、


こんな感じだったんです。ちょっと天井が異質なのが伝わるでしょうか。
教会に残るアジアンチックな要素から、VidaSanaは勝手にタラゴナと日本とのつながりを直観しました。ああ、フェリップ先生はこういうところで育ったから日本にシンパシーを感じることができたんだな、と勝手に思いました。はい、全くの憶測です(笑)。
タラゴナは海に面した漁師町としての側面があり、フェリップ先生のおじいちゃんも漁師だったそうです。バルセロナもそうでしたが、海産物に恵まれており、海沿いにはきれいなシーフードレストランがずらりと並んでおりました。


と、ここまでは、タラゴナはこういう素敵な海辺の街でした紹介です。
さてさて、KINSEIKYU®です。
おさらいですが、今回VidaSanaが学んできたのはフェリップ先生が考案したKINSEIKYU®です。以前のブログにも簡単に書きましたが、もう一度説明させてください。



(遊んでなかった証拠写真です!)
KINSEIKYU®とは、漢字では「均整灸」と表記します(以前のセミナーでは「筋整灸」という日本語表記にしていましたが、コンセプトにより近い「均整灸」と表記するようになりました)。
均整灸は姿勢を整えることを名目としたお灸法。
そのために、主に足の裏の重心がどのように変化するかを見ていきます。
足の重心は主に親指の付け根、かかと、小指側付け根の3点で支えられています。この3点で作られる三角形がなるべく大きくなることを目指します。

そんなことをして何になるの? とお思いでしょう。
それは、現生人類が直立二足歩行をすることになった歴史に想いをいたすことなんです。私たちの身体は、直立二足歩行によって、他の類人猿とは決定的に異なる進化をしてきたんです。それで、重要性を増したのが、直立二足歩行をすることを前提とした身体の特徴です。とても重い頭をてっぺんにのせて移動をするときに、どのように身体を使うことになるのか。そのことによって発達してきた身体の構造的な特徴はなにか。
特に関連してくる身体の部位が、1)足、2)骨盤と股関節、3)横隔膜、4)胸郭、5)頭蓋骨と脊椎なんですね。これらの部位が連動して機能することによって、私たちは直立二足歩行しているのです。足底で感じられる重心の幅が狭いということは、その上の身体のパーツも連動してスペースが狭くなっていることを示します。つまり、体幹に詰め込まれている内臓間のスペースが狭まるということにつながるのです。そして、均整灸で行うことは、このスペースを拡大することです。そのことによって、身体の機能が向上することをねらっているのです。

では、どのような原理によって、お灸がそんなことを可能にするのか?ここから先の説明は、ちょっと革命的ですよ。
実は、均整灸でアプローチしているのは、ファッシアなのです。ファッシアは筋膜と訳されることが多いのですが、それだけではありません。ファッシアは「筋肉、骨、内臓、神経、血管などのさまざまな組織を包んで保護する薄い結合組織」ですが、ただの“保護緩衝材”ではない!ということが分かってきました。本当にここ十数年で急速に研究対象になってきて、「人体における“最大の器官”が新たに発見された」といった表現がネットニュースなどでされたのを記憶している方もいるかもしれません。そうなんです。ファッシアは、情報伝達をして結びついている組織同士の調整に関与していることが分かったので、単なる膜ではなく器官として扱うべきだということになったのです。
私たちが日頃接している標準的な医療では、人間の身体の健康状態をチェックするのに、血液検査をしたり、臓器の形状や機能を評価しています。私たちが身体の不調で病院に行ったときに、どこが悪いのかを診断するのに基準にしているのは、多くの場合、ファッシアが包んでいる中身の方です。筋肉や神経や臓器などに異常があるのではないか?という観点から病気にアプローチしようとします。そして、働きかける対象は、臓器などです。
他方、鍼灸施術でアプローチしようとしているのは、ファッシアの方ではないか?という議論が近年の世界鍼灸界では展開されています。2018年に日本語版が出版されたダニエル・キーオン著『閃めく経絡』(医道の日本社)は、まさにこうしたポイントに迫る必読書になっています。ファッシアこそが、東洋医学でいうところの経絡なのではないかという主張を、発生学に根拠を置きながら解説してくれる本です。
別の説明の仕方をしてみましょう。「鍼灸師が行う施術は身体エネルギーが流れている経絡の調整である」と言っても多くの現代人には「はて?」と言われるばかりで理解してもらえないかもしれません。妥協策と言ってよいのかどうか議論のあるところですが、現代東洋医学でいう12経絡には、それぞれに臓器の名前も付けられています(ただし、三焦と心包という現代解剖学的な意味での臓器名ではないものが2つ含まれています)。そうすることによって、鍼灸施術でも臓器にアプローチしているかのような印象を与えてしまっています。

しかし、次のように言われたらどうでしょうか?「鍼灸師がファッシアに鍼や灸で働きかけることによって、ファッシアが包んでいる臓器の機能を正常化するのに貢献しているのです」。あれ?どちらにしても「はて?」となりますかね。いずれにせよ、詳しくは『閃めく経絡』の方を読んでいただきましょう。(Amazonのリンクはこちら)
均整灸は、姿勢を調整するお灸法と冒頭では説明しました。しかし、実をいえば、姿勢が変わるのは副産物とでもいえるかもしれません。均整灸がアプローチしているのはファッシアです。ファッシアは身体全体に存在しています。そして、ファッシア同士でも情報交換をしています。そのことによって、胸郭によって囲まれたスペースや骨盤腔内および腹腔内のスペースに余裕を生み出します。そのおかげで、身体機能を向上させることができるのです。
つまり、足の重心三角形が大きくなるということは、身体が余裕のあるスペースを獲得したことを示している指標なのです。
セミナーでは足底、膝、骨盤などの解剖学的な構造だけでなく、ひとりひとりが持っている身体のくせによって引き起こされる問題を改善する方法について、わかりやすくフェリップ先生から伝えてもらえます。基本は足の重心をどう変えるか、そのためにはどう灸をするかを学ぶのがKINSEIKYU®です。
お灸をすることで身体が変わるという経験がなければ、施術者にとってお灸は火傷のリスクがあるので避けた方がよいものになりかねません。それは、本当にもったいないことだと思います。お灸の力、火の力は、身体にエネルギーを与えてくれます。お灸によって身体が変わるという体験をする入口としてのきっかけがKINSEIKYU®だと思っています。おお!こんなお灸でこんなに姿勢が変わる?!という学びの体験を、ぜひ多くの方にしてほしいのです。
……なんか広告っぽい?
いやいや、実はほぼ広告です(笑)。
2024年もFelip先生来日決定!
この熱い、煙たい!? 男がやってきます!

10/14(月)東京・江島杉山神社「深谷伊三郎先生没後50年の集い」を皮切りに、
10/20(日)大阪・森ノ宮医療大学「均整灸セミナー」、
10/27(日)東京・伝統鍼灸学会講演「世界に広まる深谷灸」、
11/2(土)・11/3(日)東京・神田三景「均整灸セミナー」、
と毎週末講演・セミナーで大忙しい!
この2回の均整灸セミナーに多くの鍼灸師やお灸ファンの方に来ていただきたいのです!
今現在、KINSEIKYU®(均整灸)について日本語で書かれた説明がほぼ存在しないので、このブログで発信させていただきました。フェリップ先生からは、VidaSanaをKINSEIKYU®(均整灸)普及日本支部とする許可を得ております。
セミナーの申し込みはまだ始まっておりませんが、始まり次第、当ブログでも発信させていただきます。
さて、今回はKINSEIKYU®についての説明をさせていただきました。
次回は、スペイン料理勝手な感想回です。
ぜひともお楽しみに!