皆さま、こんにちは!
9月に入ってもまだまだ日中は暑く、30度を超える日が続きますが、だんだんと朝晩は気温が下がるようになってきましたね。特に私の住んでいるつくばは、もう朝方は肌掛けを被らないと寒いと感じる日も増えてきました。秋の気配が近づいているようです。
私たち鍼灸師は、患者さんの体調の変化から季節の移り変わりを実感することが少なくありません。特に、冬から春への移行期は不調を訴える方が増えます。そして、夏から秋にかけても気温の急激な変化に身体がついてこない状態になる方も少なくありません。気温と気圧の変化による自律神経の乱れが起こりやすく、なんとなく調子の悪いという訴えが出てきます。
特にこの8月末は台風も重なり、大きな気圧の変化にも見舞われ、春同様に絶不調を訴える方もいらっしゃいました。
最近では、気圧の変化と頭痛が関連していることから、天気頭痛、気圧頭痛が起こる可能性について注意喚起してくれる「頭痛ーる」やウェザーニュースの「天気痛予報®︎」というサイトも目にするようになりましたね。
そんなときにオススメなのが、「風池」ツボ押し!
「風池」とはなんぞや?
風池とは、後頭部のつけ根で胸鎖乳突筋の始まりと僧帽筋の始まりの間にあるツボです。写真で示すとこういうところにあります。
気圧と気温の変化が大きくなると、かなりの確率で「風池」付近に“ぶにぶに”とした感触があります。グミのような感じといったらよいでしょうか。風池の周辺を自分で押してみて「気持ちいい」と思えるところを探して、軽く押したり、付近をクルクルと揉んでみてください。
実は、このツボは肩凝り解消にも効果的です。肩凝りが気になるからといって肩だけ揉んでも効果がでないこと、多くありませんか?風池を軽く親指で押しながら反対側の頭を押さえるとあら不思議!肩の緊張が楽になります!
なんだか調子が悪いなぁ、というときのセルフケア方法としてオススメです!
さて、今回のテーマは「舌」です。
VidaSanaの施術を受けていただいている方にはおなじみですが、東洋医学では「舌」を見ることで身体の調子を拝察します。このことを「舌診」といいます。
舌は唯一外側から見える筋肉!その人の血流や全身の状態を把握するのに大変重要な観察ポイントなのです。エコーなどの内臓を映す技術がない時代からの知恵袋ですね。漢方薬の処方をしてもらうのに舌をみられた経験のある方もいらっしゃるでしょう。
というわけで、まずは健康的といわれる舌の状態を見てみましょう。
舌全体の色が明るいピンク色、形は丸くふっくらして、舌の上の苔が薄く白い状態です。
つまり、舌全体の色、舌の形、苔の量および色、おおむねこの4点が評価対象になります。
では、ご自身の舌を鏡で見てみてください。
どうでしょうか?
舌全体の色がなんとなく紫がかっている?舌の形がギザギザしている?苔がやたら多くみえる?苔の色が黄色?となると、気になりますよね。こうした情報から、何がわかるのでしょうか?
ここからは、実際に観察される舌の状態をみてもらいながら、解説していきたいと思います。
まずは、こちらをご覧ください。
まずは舌の色について。
左側の舌は色が全体的に黒っぽくて、いかにも血行が悪い感じがしますよね。この状態が身体全体の状態を示しているのだとすると、ちょっと嫌な感じです。巡りが悪く、代謝もよくありません。代謝をあげるためには、運動や入浴をオススメします。王道ですね。こういう舌の状態を改善するのには、一朝一夕では無理。継続した対策が必要です。
右側の舌は全体が赤くみえます。赤いということは血色がよいのでは?と思うかもしれません。ところが、そうではありません。実に東洋医学的ですね(笑)。
赤い舌は一般的に「陰虚」といわれる身体の状態を示しています。東洋医学用語でいうところの「陰」が足りていない状態なのです。身体は陰陽バランスがとれているのが理想です。私たちの身体は常に熱を発していますから、これを冷ます作用が必要になります。エネルギーを燃やして活動をする身体を適度に冷ますことが大事なんです。
では、どんなときに冷ませなくなるのか。典型的なのは、味の濃い食べ物を習慣的にとっている方や仕事に熱中して休養が足りていない方。更年期でのぼせが出ている状態にもよくみられます。対策としては、食生活の改善を含めたライフスタイルの見直しが肝になりますので、こちらも長期戦です。漢方薬が効果的なケースもあります。
次は舌の形です。
左側の舌は少し湾曲して前に出ていますね。このように舌が真っすぐに出せない方は要注意です。かなり以前から舌の湾曲が続いているという方は身体の癖なのかもしれません。しかし、最近湾曲が出始めたという方で、さらに顔の筋肉が動かしずらい、話す時にろれつがまわりにくくなっている、手足に力が入りにくいなどの症状がある方には、病院での検査をオススメします。脳神経系のトラブルが起こっている可能性があるからです。
右側の舌は一見普通に見えますが、舌の周りに歯形が残っているのがわかるでしょうか。このことを歯痕と呼びます。舌が膨張して歯にあたっている状態が続いていることを示しています。舌のむくみは余分な水分が身体の中に溜まってしまっている証拠。お酒の飲みすぎという水分の過剰摂取(ドキッ!Chikakoはこのタイプ)、運動不足、代謝不足などの原因が考えられます。水分摂取量の見直しや半身浴・岩盤浴など汗をかくことで代謝を高めるのをオススメしたいタイプです。
次は苔の量です。
左側は苔の量が大変多い舌ですね。歯痕が残るタイプの舌とセットになることがあり、つまりはこれも水分過多を意味します。苔の量は身体の水分代謝の良し悪しを反映します。
その反対に、右側の舌は、赤い舌と同じく「陰」が足りていない状態を表しています。熱中症の患者さんがこんな舌でした。
次は苔の色です。
この二つの舌に共通するのは、身体の熱量が高まっているということです。東洋医学的には、熱が多い時に身体の表面に現れるサインは、「赤」「黄」「黒」で示されると考えます。
苔の色でいうと、「黄色」は熱分と水分量が多いタイプ。「黒」は「黄」よりもその状況が深刻化and/or長期化したタイプです。苔が黒い患者さんに会うと、相当慎重な施術を考えます。
さらに、分かり易いのが舌裏の静脈です。
左は静脈の色が紫から黒に近い色になっているのは、誰がどうみても良くなさそうだと分かりますよね。右は反対に紫も黒もないと思います。これは健康な状態です。
東洋医学では「瘀血」と呼ぶ老廃物がしっかりと流されていないことが察せられます。さらに、不均衡なボコボコのふくらみが目立つのも、やはり水分代謝が悪い証拠。食生活の改善を含めたライフスタイルの見直しが必須なタイプです。
そして、舌裏静脈は鍼灸施術の効果がとても見えやすいのです!VidaSana施術前後で、舌裏の写真を撮らせていただいているのですが、良く効いた施術の後では劇的に変化が現れます!
(左は施術前、右は施術後。静脈の色がわかりやすく変わってます!)
鍼灸施術は、ひとりひとりのお身体に対応して自然治癒を促すスイッチをオン!にすることができるのだと実感していただけるのではないでしょうか?
舌から見えてくるのは基本的に、身体の水分代謝の状態、めぐりが良いか悪いか、熱量が多いか少ないか。舌にはその人のライフスタイルが現れます。飲み会で暴飲暴食した後とか、何か大きなストレスがある時とかの舌の状態は良くないことが、鏡の前のあなたにも明白にわかるはず。舌をみることで身体の状態をセルフチェックできるんです!継続的にご自身の舌のコンデションをチェックしてもらうと、身体が日々変化していることに気づいてもらえるはず。その気づきが健康への第一歩になります。あなたの身体を健康にするのもしないのも、あなた自身であるという事実に向き合うために。
ちなみに今回患者さんたちの舌を載せさせていただきましたが、一番探すのに苦労した舌はどれだと思いますか?
……一番健康な舌です。まだまだ健康な舌を手に入れる旅は続く。
では、残暑厳しい日本での生活を一緒に乗り切りましょう!
皆さまの生活/人生と舌が色鮮やかでありますように。