鳥のさえずりに耳を傾けることと東洋医学の秘訣

 皆さん、こんにちは!
 突然ですが、冬は絶好の野鳥観察シーズンだということ、ご存知でしょうか?落葉樹の葉が散って、木々の梢が関東の冬晴れの青空に映える時期。すかすかになった木の枝で鳥たちがさえずったり、餌を物色したりしている姿が地上から双眼鏡なしでも見えやすいんです!

 公園の池なんかに渡り鳥のカモが押し寄せる時期でもあります。土地柄によっては白鳥が渡来するところもあるかもしれませんね。つくば市内の公園の池には、ヒドリガモ、ハシビロガモ、オナガガモ、マガモ等が観察できます。意識してみないとカモの区別は難しいのですが、一旦注目すべきポイントが分かると結構分かるようになります。

ヒドリガモ(頭が茶色、オナガガモに羽が似ている)
オナガガモ(尾っぽが長く、嘴が灰色)
ハシビロガモ(嘴が平たく大きい、水面のプランクトン等をビチャビチャ食べる)
マガモ(嘴が黄色く、頭が緑)
ヨシガモ(羽が鎌状)

 しかし、どうして急に野鳥の話?と疑問に思われた方々も少なくないでしょう。
 VidaSanaの趣味?―はい、正解!
 咋シーズンから野鳥観察に目覚めております(笑)。

 2025年現在、関東に住む私たちの身近に観察できる小鳥としては、既に雀よりも圧倒的に数を増やしていると思われるのがシジュウカラ。白黒灰色のスタイリッシュな色合いで小ぶりなためにファンが多いのではないかと思われます。

どうでしょう?可愛くないですか?

 そのシジュウカラが、なんと「文を作って会話をする!」ということを科学的な実験によって立証して世界の科学界に旋風を起こしたのが、新進気鋭の研究者:鈴木俊貴先生。近著『ぼくには鳥の言葉がわかる』が話題になっています。

 古代ギリシャ時代から現代に至るまで「動物の鳴き声は数種の感情表現で人間の言葉のように意味を持つものではない」という固定観念を見事に覆す科学的な手続きを根気よく実験し続けた「オタク力」! 半端ないですね! 動物の言葉を理解するドゥリトル先生の現代人バージョンと言われるわけです。本のイラストが可愛いのですが、テキストだけでなく、絵も俊貴先生筆とのこと!

 俊貴先生によると、シジュウカラは餌がたくさん落ちていることを仲間に教えて呼び寄せます。それも、シジュウカラ同士だけではなく、ヤマガラやコゲラにも通じる言葉で。さらには、「近くに天敵の蛇がいるぞ!」とか「カラスがいるぞ!」という言葉まで。

 そういう意識をもって鳥のさえずりに耳を傾けると、散歩中の音の風景が一変します。

 「ヂぢぢー」「ぴっつぴっつぴっつ」「げーげーげー」「ききききー」…

 意識を向けたことがないと身の回りにいる鳥のさえずりには色んな声音が混在していることに気が付かない。「ほーほけきょ」というウグイスのちょっと変わった声音以外には、ほとんど気に留めることさえない。

 でも、意味があるかもしれない言葉を話していると考えると、さえずりにハッとする。
 あっちこっちの散歩道で耳にするさえずりが私に語りかけてくる!

 その体験は、Chikakoをハッとさせました。
 これは何かに似ている!
 そうだ、患者さんの身体に向き合っている時の意識の持ち方と感覚の関係。

 脈を診ている時、お腹をトントン打診している時、鍼を刺している時…
 鍼灸師は独特な意識と感覚の働かせ方をしています。

 通常、それらの感覚で解ることが何かを意味しているとは考えていないようなことに、鍼灸師は意味を見出して施術しているわけです。

 鍼灸師が患者さんのお身体の状態を診断する指標は、脈だけでなく四診といわれる望診・聞診・触診・問診があります。身体の表面に出ている寒熱・色合い・におい・触った感じ・患者さんのお話しぶり等々。患者さんが発している多くの情報を材料にして、どのような施術をするべきなのかを判断するのが、鍼灸師の仕事です。患者さんがいうことを聴くだけでは不十分で、患者さんが言葉として発している情報以外にも「耳を傾ける」ことが鍼灸師には要求されるのです。

 そんな風に患者さんの身体の声に耳を傾けることができれば、言葉を発することのない小鳥にも有効な鍼灸施術ができる、というエピソードが江戸時代の医家の本にも紹介されています。

 山脇東門(1736-1782)の『東門随筆』。
 東門は、江戸時代中期における古方家四大家のひとり、漢蘭折衷派の先駆=日本近代医学の端緒を打ち立てたとされる山脇東洋(1705-1762)の第二子で、父の医学をもっともよく継承した医家のひとりと評価されます。父の東洋は、長らく禁制とされてきた人体解剖を幕府の医官として日本で初めて行い、その記録を公表したことで有名で、日本史でのテスト対策で記憶に残っている方もいるはず。

 『東門随筆』で紹介されているエピソードは、小鳥に鍼灸を施して治療してしまう奈良の鳥屋を営む主人。評判を聞きつけて、大阪の鳥屋も治療を依頼するほどだというのです。

 「小鳥の不調をなんとかしたい!」という慈しみの想いがあれば、小鳥の身体の声に耳を傾けることができるのでしょう。その上で鍼灸を施すことができれば治療することができるのでしょう。

 そんなこんなで、散歩中に小鳥のさえずりに耳を傾けることは東洋医学の極意に通じている! という発見を今回は皆さまにご紹介しました。

 ちなみに、2025年現在、上野の国立科学博物館で2月24日まで特別展「鳥」が開催されております。一生分の鳥がみられるかも⁈ というキャッチフレーズ。

 博物館の中でも多くの鳥は見られますが、皆さまの身の回りにも多くの鳥たちがいます。この冬、鳥のさえずりに耳を傾けて、その姿を確認してみませんか?

【文献】
一日一種2021『身近な「鳥」の生きざま事典―散歩道や通勤・通学で見られる野鳥の不思議な生態―』SBクリエイティブ.

鈴木俊貴2025『僕には鳥の言葉がわかる』小学館.


鳶田ハジメ2025『まいにち鳥びより』フレックスコミックス.

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