皆さま、こんにちは!
今回は旅の前半戦、ゲルでの体験についてお伝えします。(ゲルは少しは前までは中国語のパオという呼び方のほうが一般的でした)

モンゴル民族の生業はもともと遊牧。遊牧というと、羊などの家畜を馬と伴い、ゲルを作っては移動し続ける定住しない人々というイメージかもしれません。
でも、本当はちょっと違います。コミュニティによって春・夏・秋・冬の季節ごとに放牧する場所が決まっているそうで、国もだいたいどのあたりに国民がいるのか把握しているとのこと。モンゴルは冬の厳しい寒さの期間が長く、11月から5月までは雪が残っており移動は大変!季節ごとに一族で受け継いできた放牧地で暮らすそうです。
VidaSanaが今回訪れたテレルジ国立公園はウランバートルの市街地から東に60キロ程度。国立公園内は自然保護の観点から羊とヤギを飼うことは原則禁止されており、実際に滞在中に羊とヤギはほとんど目にしませんでした。一部許可された家庭だけが飼っているとのこと。ヤギは本当に草を根っこから食べ尽くしてしまうからなんです。インドでは、草取り目的で羊やヤギの大群を率いて畑の所有者からお金を払ってもらう遊牧民(?!)を見かけたことがあります。
そのため、公園内で見かけたのは馬と牛、もしくはモンゴルヤク(ウシ科)。ヤクの毛は通気性・保温性に優れており、モンゴル土産としてヤクの靴下は大人気! 右写真の毛の長いのがヤクです。



ヤクのチーズ・バター・ヨーグルトを試食させていただきましたが、どれもあっさりとしたクセのないお味でした。本物のグラスフェドですからね~。



モンゴルでゲルに宿泊!というと、どんな未開の地に行ったのかと思われるかもしれませんが、実は現代のゲルはツーリスト用に設置されているものが多々あります。

今回VidaSanaが宿泊したゲルもツーリスト用に約30戸のゲルがまとまっており、別建てで食堂棟とトイレ・シャワー棟が用意されていました。日本で言うとグランピング施設のような感覚でした。


ゲルにはWi-Fiはありませんでしたが、電源はあり、夜でも明るく過ごせました。日中はゲルの天井部分がビニール製になっているので電灯なしでも明るい!モンゴルは高緯度でゲル周辺には高い建物もないため、朝の4時から夜の10時まで自然光で明るかったです。


ゲルの中には暖炉(薪ストーブ?)がひとつ用意されており、夕方8時頃と朝の4時頃にスタッフが炉を入れに来てくれるんです。ゲルには内鍵がないので、早朝にスタッフがそっと室内に入ってきて火入するので何も知らない人はビックリするとか。

今回泊まったツーリストゲルは「Tumen Khaan Tourist Camp」。国立公園内の車でアクセスできる場所としては一番奥にあたり、まわりが森林に囲まれる自然豊かな環境。
ゲルの周辺にはハーブが多く自生しており、ツーリスト用に種を蒔いたんじゃないかと思うほど。ガイドさんに確認しましたがハーブは全て自生だそうです。

馬糞や牛糞がそこいら中に落っこちているので、土壌が有機肥料で満ちている!のはよくわかります。

さらにゲルの周りには小動物がたくさん!

VidaSanaが見たオナガホッキョクジリスは食用ではないとのことですが、タルバガンというモルモットはモンゴルでは普通に食べるとのこと。チンギス・ハーンの時代から狩りの対象でした。タルバガンの巣穴は大きいので草原ではよく目にするとのこと。
さて、草原に自生するハーブを見極めるのに一番大事なポイントは、食べてはいけない/触れてはいけない有毒野草を知ること。わかりやすい毒の例は、トリカブト。トリカブトの葉の見た目はヨモギや食用になるニリンソウにそっくりなのですが、茎に触っただけで痛みが出る危険な野草の代表格。トリカブトは湿気が多いところに自生するとのことで、森の中で散策してみましたが、今回のハーブ探検では発見できませんでした。


この他にも、トリカブトと同じキンポウゲ科は概ね有毒であるため気を付けた方がいいとのこと。例えば、園芸でもポピュラーなアネモネやクレマチスは茎や葉から出る液が有毒なため、触れるときには注意が必要。

こうしてみると同じ科なので、アネモネとトリカブトは葉がそっくりですね。
ゲルの周りのハーブを確認した後、周辺の森の中に入りました。

まるで北海道の森の中のよう!モンゴルの緯度は北緯49度、北海道の緯度は最北端の宗谷岬で北緯45度。植生が似ているため、北海道の植物図鑑を持参した参加者もいらっしゃいました。
Vida Sanaは植物フィールドワークに関しては素人ですが、今回のフィールドワークに参加して、日本の野草でも薬草になりうるものがこんなにもあるのか! という気づきがありました。

ワレモコウはモンゴルでは最も多く使われるハーブのひとつで、風邪薬として用いるとのこと。日本でも自生していますよ。

イラクサはヨモギの葉に似ていますが、葉と茎に棘が生えており、棘の先からヒスタミンが出ているため、触った瞬間に激痛が走るため、通称「ギャー草」(笑)。この草はモンゴルでは羊肉と合わせてホーショール(モンゴル餃子)の具にすることで、羊肉をさっぱりとした味わいにすることで知られています。


ちなみに今回はモンゴル人の料理人の方から当地風餃子の作り方講座をしていただいたんですが、そのときの餃子がこちら。

めちゃくちゃかわいくないですか!?この形のことを羊型というそうなんですが、ガイドさんはネズミだといっていました(笑)
このハーブたちが当たり前に存在する環境では、羊肉が美味しく食べられるのは当然。
餃子の写真が出たついでに、モンゴルで提供していただいた羊肉料理の数々をご覧ください。

朝ごはんに出た羊のひき肉粥から始まり、羊の臓物スープに、羊の茹で肉、羊ソテー、羊の餃子、羊のしゃぶしゃぶ、羊とセロリ炒め!これでもか!というくらい羊料理が出てきました。






もう一生分羊食べた!という声がちらほら。羊肉が臭くて食べられないという人には苦行だったようですが、なんといってもVidaSanaは羊肉ファン! 大喜びで羊を平らげましたが、さすがに朝のわかめ豆腐スープも羊肉ベースだったのには…(笑)

帰りの飛行機の機内食で、ビーフを食べたら羊臭がしたのにもビックリしました。もう、何を食べても羊の風味!

この羊を放牧するのに重要な相棒は、やはり馬!
今回はモンゴルの暮らしをまるっと体験できるツアーでしたので、もちろん乗馬体験もしました。現地の人は颯爽と馬を乗りこなしていて格好いいんですよ~。

しかし、日頃から乗馬に縁のない人にとってはお尻がつらくて大変…
乗馬する馬の背には鞍がついているのですが、その鞍が割としっかりしたもので、馬が跳ねるたびに身体も浮き上がり、落ちてくると鞍にあたるんです。
観察していると熟練のモンゴル人は、鞍からお尻がまったく離れないんです。内ももの筋肉が鍛えられているので、しっかり馬と身体が一体になるように乗馬することができるんです。そこまでいけば、いくら乗っても痛くもかゆくもないでしょう。馬と一体になるということはこういうことか!ということ見せつけられた体験でした。チンギスたちは、何日間も馬で移動してイランまでも到達していたことを考えると絶句します。
草原のゲルでの体験は濃厚で、振り返ってみると本当にたったの3日間だったとは思えないほど心揺さぶられました。大地に自生する可憐な薬草の数々。それを食むことで生きている羊、ヤギ、牛、馬、ヤクの姿。その家畜を食する人間の生活。循環する命のエネルギーの流れに身を置く経験は本当に清々しかったです!

おまけ情報です。国立公園内の観光客が集まるところには、必ずといってよいほど、狩りに使われる鷲や鷹がいて、観光客の腕に乗せて写真を撮るビジネスが人気でした。鷹狩はもともとカザフスタンの習慣でモンゴルの習慣ではなかったとのこと。中央アジアとのつながりが見えました。
さて、次回は大都会ウランバートルに戻って都会人を癒す伝統医療について紹介しますね。

草原とお別れする最後の夜、現地スタッフが即席で用意してくれたキャンプファイヤーの灯りは美しかった!薪になる枝を近くの森から集めてくださったんですよ。
