【Perú日誌】⑥日本の行く末@メキシコ

今回、旅の締めくくりとして18時間のトランジットを利用し、メキシコのティオティワカン遺跡とメキシコシティの中心地を観光してきました。
そこで感じた世界の今!と日本の国際的立ち位置について考えたことをお伝えしたいと思います。

なんだかんだ言う前に(笑)、まずは、ティオティワカン遺跡をご覧ください。

メキシコシティ国際空港に到着したのは朝5時20分。タクシーに乗ってティオティワカンに着いたのは8時前。
なんと開門ちょうどに到着!
ツアーの観光客が入る前に、入場できました。

ティオティワカン遺跡内の最大の見どころは、太陽のピラミッドと月のピラミッド、ケツァルコアトル神殿。
以前はピラミッドに登ることができましたが、現在は立入り禁止で外観を眺めるだけになっていました。

早朝のケツァルコアトル神殿を二人占め!なんと、メキシコらしいことに警備員さえも午前8時には神殿に到着していませんでした(笑)。

太陽のピラミッドと月のピラミッドにつく頃にはツアーの観光客が跋扈しておりました。

遺跡内の充実した博物館も見学できて大満足のティオティワカンの帰り道、バスの中からこんな光景が見えました。

2014年に発表されたロープウェイ計画。郊外の丘を埋め尽くすように拡大した新興住宅街と市街をむすぶロープウェイが何路線にも渡って運用されていました。交通渋滞の解消と安全の確保のために導入されたロープウェイ。乗車料金は6ペソで日本円に換算すると約50円。低所得階層にとっての命綱となっている模様です。ロープなだけに。

写真は撮れませんでしたが、メキシコシティでは路上テント泊の方々がそこかしこに。現地人曰く、アメリカへの経由地として、メキシコに不法滞在している外国人だそうです。あまりメキシコシティではもともと見かけなかったカリブ系の物乞いが目立ちました。

貧困問題も不法滞在問題も、日本ではあまり表立った問題とは捉えられていないと思いますが、ラテンアメリカでは目の前で展開する典型的な社会問題です。ペルーでも街の角々に乞食を見かけることは、そんなに珍しいことではありません。日本でも上野や渋谷のような繁華街にいけば、ときおり物乞いをする人を見かけますが、その数は比較になりません。

突然ですが、私たちがペルーで食べたこの昼食はいくらだと思いますか?

正解は15ソル。1ソルが約39円ですから、日本円に換算すると約585円。
たっぷりのご飯と肉、芋とサラダ、ジュースもついて585円。日本ではなかなか食べられないコスパの良さですよね。

では、メキシコで食べたお昼ごはん。これはいくらでしょうか?

正解は95メキシコペソ。1ペソ約8.3円なので約788円。
主要バスターミナルの店舗で食べたので、街なかの店舗とは価格帯が違いますが、日本円に換算するとそこそこな値段になりますね。ちなみに、この料理はポソレといい、アステカ時代から続く伝統的な豆と肉スープです。

皆さん、このラテンアメリカの価格帯について、どう思いましたか?日本のメディアで取り上げられるのは、ニューヨークでピザとコーラを食べたら6,000円したとか、ソーセージが挟んであるだけのホットドッグが3,000円したとかいう派手な(⁈)話題。ラテンアメリカや他の地域はどうなっているのか、旅行に出ない限り、意識することはないかもしれません。

Chikakoが留学していた30年前、ラテンアメリカでの食事の価格帯は日本の3分の1程度でした。それが今ではほとんど変わらなくなっています。ラテンアメリカ諸国は日本が税金を投じて国際援助をしている場所です。援助している国と価格帯が変わらない? おかしくありませんか?ジワジワと後進国の価格が日本と変わらなくなっている現状を目の前にすると焦燥感にかられるのは、私だけではないでしょう。

経済的な問題だけではありません、文化的にも日本のプレゼンスは薄れつつあります。
Chikakoはいかにも東アジア人の顔をしていますから、ペルーにいくとよく通りすがりに「チーナ(中国人)」と呼ばれます。
それがペルーに通い始めて30余年で、今回はじめて「コレアーナ(韓国人)」と呼ばれたのです。チャチャポーヤスの街角で。
BTSを中心とした韓国のアイドルの人気ぶりや、誰もが韓国ドラマにはまっている様子は、世界に出ると肌で感じます。
確かに日本のアニメは人気ですが、ニッチなマーケットの需要を満たすのみで、韓国文化のような席巻はしていません。

今回、日本からメキシコに向かう行きの飛行機で隣席になったのは、韓国で宗教布教活動のボランティアとして約2年間滞在したというメキシコ人の若い女性でした。宗教に熱心なのかと思いきや、ボランティアという名目で韓国における衣食住を保証されていて、推しの韓国人アイドルに会える!という動機で韓国滞在したとのこと。給料は発生しないので、タダ働きです。でも、メキシコからなんと数十人がボランティアに従事していた模様です。それだけ韓国文化は世界の若者の心を掴んでいるんです。

経済的にも、文化的にも、日本は後進国に片足を突っ込んでいます(もしかしたらもう両足?)。
「日本のアルゼンチン化」という警鐘が鳴らされて、はや30年が経とうとしています。ここ最近、めっきりとその警鐘が現実となってきていると感じるのは、私だけでしょうか。

「日本のアルゼンチン化」の警鐘を鳴らしたのは、今は亡き畏友:佐野誠氏でした。アルゼンチンは第一次世界大戦で、ヨーロッパが戦場となったため、世界の食料庫となり、トップレベルの経済大国となったのですが、過去の栄光に囚われ、構造改革が進まずに現在では完全に経済的に落ちぶれているにもかかわらず、国民の間では危機感が薄い。日本はバブル崩壊以降アルゼンチンと同じ道筋を辿っているのではないか、という警鐘でした。

しかし、まだちょっとした希望はあります。
日本のものづくり神話はいまだ健在です。
「鍼灸の道具は、日本のものだったら何でも買うわ!」という方もいらっしゃいました。
「南米のデコボコ道を走るのに一番信頼性の高い車はトヨタだ」ということで、チャチャポーヤスで見かけた4WDはトヨタ車ばかり。

「日本は品質の良いものづくりの国である」という国際イメージが定着したことは本当に素晴らしいことです。
これからも日本は良いものを提供すると言われなければ、この国の国際価値はないと言ってもいいでしょう。

さて、日本の行く先はどこに向かっているのでしょうか。ものづくり神話を維持できるのか、アルゼンチンになるか。
今回は衰退国家の終着地点を考えさせられる旅となりました。

以前のブログ(2022年5月)で紹介させていただいた野村総一郎著『人生に、上下も勝ち負けもありません 精神科医が教える老子の言葉』(2019年、文響社)では、「上り坂の儒家、下り坂の老荘」という言葉が紹介されています。人生がうまく転がっている時には儒教の戒めで調子に乗り過ぎないように自らを律して、なんだかうまい具合でない時には老子・荘子のような社会的な囚われから自由な思想に触れてみるとよい、という先人の知恵です。

日本伝統鍼灸を支えてきたのは老荘思想と言われますので、実はこれからの日本を救うのが鍼灸なのかも?!と妄想するChikakoなのでした。

というわけで、今回のPerú日誌シリーズはこれにて終了です。
チャチャポーヤスの透き通った空のように、皆様の生活が健やかでありますように。

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